ショートストーリー
明日への贈り物 Episode38
公衆で子どもを怒嗚る母親 周囲は注意すべき?
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
電車で乗り合わせた親子 心が痛む冷たい言葉の数々
ある日、妻と2人で電車に乗っていると1組の親子が乗ってきた。ママと4歳くらいの男の子だ。その子の手には棒付きのアイスクリーム。
私たちと反対側の席にちょこんと座ると、外を見ながら美味しそうに食べている。
「前向いて食べろや!」突然、驚くような一言が聞こえた。隣に座る母親は携帯をじっと見ている。思わず妻と顔を見合わせてしまう。
チッ。舌打ちをすると「いいか。床に垂らしたら許さないからな」と母親が言うと、子どもは恐る恐る母親の顔を見上げながら食べ続ける。手はアイスで汚れてしまっている。いつもこうなのだろうか。見ているこちらが辛い。
終点の駅に着くと、親子も一緒に降りた。改札に近づくと「早くゴミ捨てろよ!」と声を荒げる母親。小さな体がゴミ箱に走るのが見える。
もう我慢できない。「ちょっと言ってこようかな」と妻に言うと「やめた方がいいよ」すぐ返事が返ってきた。「私たちが今見ただけでは分からないよ。あの子が電車に乗る前にアイス食べたいって騒いでいたら?そんな風に毎日駄々をこねてるかもしれないよ」確かにそうだ。
ただ、心のモヤモヤは晴れない。ふと親子に目を戻すと、そこにはもう2人の姿は消えていた。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています