ショートストーリー
明日への贈り物 Episode29
家に居場所のない少女
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
今日も来てくれてありがとう 子どもを見守る地域の図書館
図書館は誰でも自由に利用できる公共の場所。読書や勉強はもちろん、何らかの理由で家庭や学校に居場所がなく、孤独感を抱える子どもたちが安心して過ごせる場所としても貴重な役割を果たしている。
私が勤める図書館には無口な小学生の女の子Aちゃんがやって来る。初めは週末だけだったが、度々平日の昼間にも来るようになり、少しずつ打ち解けるようになった。彼女から話しかけてくることは無いが、私から好きな本のことを聞くと目をキラキラさせながら読んだ本の話をしてくれた。
学校や家のことは何も聞かない。家のご両親は?食事はどうしてるの?色々と気になるけれど、ここが彼女にとって不安なく過ごせる場所であるのが大切だと思っていた。
ところが、ある日、いつもより遅い時間にAちゃんが顔を腫らしてやって来た。
「どうしたの?」
声を掛けても目を合わせず児童書コーナーに向かうAちゃん。後ろ姿を追ってもう一度「顔のケガ、大丈夫?」と尋ねると、「何でもないよ」とだけ答えて口を閉ざしてしまった。
私には、今日もここに来てくれたことが彼女なりのSOSに思えた。図書館は子どもを見守る場所だ。目をそらすことは、できない。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています