主に妊娠から出産、育児に至るまで、母子の健康を支える助産師。出産をサポートして赤ちゃんを取り上げるだけでなく、妊娠期や出産後の健康指導、乳房ケア、新生児の支援なども担う、いわば児童虐待をいち早く察知する地域の見守り隊でもあります。そんな県内の助産師達が数多く在籍する「一般社団法人 茨城県助産師会」会長の礒山あけみさんと同会子育て・女性健康支援センター長の畠山みき子さんにお話を聞きました。
出産前後の母親を中心に
全ての女性の心身に寄り添う
会の発足から90年以上の歴史を誇り、県内約250名の助産師によって組織される茨城県助産師会。出産前後の母親をはじめ、女性の心身の健康課題に取り組むため、さまざまな事業を展開しています。
まず育児中の母親を中心に、思春期から更年期まで女性のライフサイクル全般の支援を行う「子育て・女性健康支援センター事業」では、電話相談の「いばらき妊娠・子育てほっとライン」や小中高校への出張講座「いのちの教育」などを実施。そして災害発生時に母子やその家族を守る防災ハンドブックや防災支援マニュアルの作成のほか、産後ケアや新型コロナに関わる相談支援といった行政からの委託事業も行います。また、5月5日「国際助産師の日」や11月3日の「いいお産の日」には主催イベントの開催など、ジャンルレスに幅広い活動をしています。
コロナ禍でもオンライン研修で助産師のスキル向上を図り、母子に対しては対面を基本とする途切れのない支援を継続しています。
「生まれてくれてありがとう」
そのままを受け入れるサポート
中でも児童虐待防止の一助となっているのは、茨城県が全国で先駆けて実施している出張産後サポート「茨城県助産師なんでも出張相談」です。これは、「授乳が上手くいかない」「発育が他の子より遅い」など様々な育児不安を抱える新米ママの自宅に県助産師会所属のスペシャリストが訪れ、じっくり話に耳を傾けてフォローする取り組み。
「相談された方の良い所、できている所を見つけて、『それでいいんですよ』と前向きになれる支援を心がけています」と子育て・女性健康支援センター長の畠山みき子さんは語ります。同じく県の委託事業である電話相談「いばらき妊娠・子育てほっとライン」でも、その姿勢は変わりません。
児童虐待死の大半は0歳児。それは望まぬ妊娠や出産が主な原因とされています。小中高校での「いのちの教育」は、正しい妊娠、出産の知識を伝えるとともに、子どもやその親達に「生まれてきてくれてありがとう」と命の大切さを再認識することを大切にしています。
左から会長の礒山(いそやま)あけみさん、子育て・女性健康支援センター長の畠山みき子さん
起きてはいけない児童虐待
チームで繋げる産前産後支援を
年間約800件も相談が寄せられる「茨城県助産師なんでも出張相談」は県内在住で、すでに出産医療機関を退院した産後4ヶ月未満の母親が対象です。1回の訪問時間は平日の2時間程度。最大3回まで利用可能で、自己負担額は千円と手軽に利用できます。
「いばらき妊娠・子育てほっとライン」も経験豊富な助産師が、妊娠や出産、育児や母乳、子育てに関する不安、男女問わず思春期から更年期までありとあらゆる相談に応じています。
会長の礒山あけみさんは「児童虐待は1件でも起きてはなりません。ネットの誤った知識ではなく正しい知識を知って貰い、出産前後はさまざまな専門家や行政などチームで途切れのない支援を続けていきたい。そして、児童虐待の防止につなげたいと考えています」と語ります。
地域で暮らす母と子を、地域一丸となって支えていく。茨城県助産師会は、県内全ての妊娠や出産、育児の悩みに寄り添い、ともに手を取り合ってサポートしていきます。